河津七滝オートキャンプ場の思い出

修禅寺から天城越えして河津七滝

ちょっと前の話ですが、

10月3日から5日、家族プラス娘の友人1名で

伊豆・河津七滝にキャンプに行ってきました。

 

伊豆・河津町といえば桜で有名ですが、

天城山麓を流れる河津川には7つの滝があって

こちらも河津七滝(かわずななだる、と読むらしい)と呼ばれる観光名所です。

 

山間のひなびた温泉旅館街は湿っぽい、文学的な情緒が感じられ

道ゆくカップルがみんな駆け落ちしてきたんじゃないかと

錯覚してしまいそうになります。

 

そんな温泉街を横目に過ぎて、辿り着いたのは河津七滝オートキャンプ場。

 

ウェブサイトをみて、敷地内に釣り堀があるというのと、

24時間入浴可能の温泉がある、ということで

川も近いしここに決めました。

初日は大混雑

到着したのは、もう日も暮れようという17時ちょっと前。

テント設営して、ご飯を作らないといけないから焦りました。

 

案内されたサイトは24時間風呂の建物のすぐ隣、

水場がすぐ目の前で利便性は良いけど、なんだか落ち着かない場所でした。

 

しかし、そんなに広くないキャンプ場はほとんど満員で、

まるで山間に町が一つできたかのような賑わい。

夜も煌々と明るく、まるでお祭りのよう。

 

24時間風呂からはひっきりなしに話し声と「ザッパーン」とお湯をかける音がして

夜中もこれが続いたらかなわんなあ・・・と正直思いました。

 

気を取り直して、なんとか食事もできたし、あとは焚き火などして過ごしました。

子供たちは大興奮、楽しそうでよかった。

 

 

こうして初日の夜は慌ただしく賑やかに過ぎていきました。

 

そして次の日の朝。

 

満員に近い状態のキャンパーたちは次々と

テントを撤収してキャンプ場から去って行きます。

 

私たちは連泊なので、のんびり朝ごはんを作ったり朝湯に入ったりしました。

11時チェックアウトで、その時点で残っていたのは2組くらいか・・・?

 

昨日の喧騒が嘘のように静かになり、

時間がとまってしまったかのようです。

 

釣り堀とおじいさん

 

それから私たちは、釣り堀で釣りをしようと管理室に向かいました。

 

「あのー釣り堀で釣りしたいんですけど・・・」

 

と言うと、お姉さんが説明してくれました。

4匹までは二千円で、それ以降1匹につき三百円(だったかな?)かかるとのこと。

釣竿は1本で、餌はいくらでも使ってよいと。

 

子供たちは1人1本釣竿を持ちたかっただろうから

ちょっとイメージ違うかな、と思いながら、まあいいや。

魚がたくさん連れてしまっても食べきれなくて困るからね。

 

釣竿とバケツを手に歩いていると、

色眼鏡、開襟柄シャツにハットといういでたちのおじいさんが向こうから来て、

 

「うちの魚は餌食べるように仕込んであるから、たくさん釣れるよ!」

 

と声をかけられました。

 

「うちの」ってことは、オーナーさんなのかな・・・?

ヘラヘラ笑いを浮かべながら「は〜い、がんばりまーす!」と答えておきました。

子供たちは1人15分交替で、かわりばんこに釣りをすることにしました。

 

 

トップバッターはうちの小学3年生の娘っこです。

この人は釣りが大好き。釣り堀しか行ったことないけど。

そしてなぜか釣れる。15分立たないうちに1匹釣り上げました。

 

 

次は5歳の息子。

釣竿が重いのと、魚が食いついてくれないので

早々に飽きてしまった様子。

 

最後に娘の友人の女の子。15分粘ったけど、釣れなかった。

 

もう一巡してまた娘が釣り上げて、

他の2人はやめてしまったので結局娘が3匹釣り上げた。

 

4匹目はなかなか釣れない。

 

娘も飽きて、「おかーちゃん代わって」というので

私が釣り糸をたらしていたのだが、全然食わない。

 

小一時間やって、もう3匹でいいや、どうせ子供らは食べないだろうから、

と釣竿を返しに行くと、先ほどのおじいさんがいて、

「釣れた?」と聞いてくる。

 

3匹釣れたけど、もうこれ以上は釣れなそうだ、と述べると

「絶対釣れるから。この魚捌いといてあげるから、その間釣ってなさい!」

と追い返されてしまった・・・!

 

ひええ・・・

やめたいのにもう1匹釣れるまでやめさせてもらえないとか!

 

涙目になりながら、釣ってるとおじいさんが3匹のはらわたを掻っ捌いて

戻ってきた。そして池のほとりで、色々アドバイスをしてくれる。

 

どうやら釣れるまでやめれなそうだぞ。

 

誰かお願い!釣られて!と魚に懇願するような気持ちが通じたのか

無事1匹釣り上げることができた。よかったー

おじいさんも満足そう。

 

腹ワタをとって、串にさすところまでやってくれるので

我々は焼くだけ。子供たちも案外食べた。

私たち大人は魚をアテにワンカップ酒を燗して飲んだ。

 

誰もいない管理室で鍋を洗う

 

その後、昨日使った鍋の底が焦げ付いてしまったので

金たわしを借りれないかな?と思っていたら

またさっきのおじいさん登場。

 

「どうした?」と聞かれたので

「鍋が焦げちゃって、金たわしが借りれないかと」と言うと

管理室にあるんじゃね?というから管理室に行くと誰もいない。

 

が、ちょっとした日用品を販売してるコーナーに金たわしを発見。

しかし、購入しようにも人がいない・・・どうしたもんかな。

 

思案しているとおじいさん、登場。

 

「この金たわし、ほしいっすけど〜」というと

「買わないでも、ここの使えばいいよー」と言ってくれたので

おっ、その言葉を待ってたんすよ・・・と持ってきてくれるもんだと思ったら、

「ここで洗ってけー」と管理室の奥の厨房に通された。

 

そしておじいさんはどこかに行ってしまった。

 

誰もいない管理室の厨房に勝手に入り込んで

鍋をゴシゴシしてるのシュールすぎる・・・とにやけてると、

管理室の電話が鳴り始めた。

 

当然、誰もいないから、ただ鳴り続けている。

 

私も東京から、このキャンプ場に何回か電話をかけたが

誰も電話に出なかったのだ。

あの電話の向こうの人は私だな・・・。

 

電話の向こうでは

「何で誰も出ねえんだよっ!」

とイラついている人がいるのかもしれない。

 

でもね、ここは東京とは時間の流れが違うんだよ。

みんなテキトーにやってるの。

 

東京だとイラつくことも、ここに来ちゃえばイラつかない。

不思議だねえ。

私は不意に「キャンプに来ている」ことを実感した。

 

電話が鳴り止みしばらくすると、階上から誰か降りてきて

私をみて「わっ!」と驚いた。

朝、釣りの受付をしてくれたお姉さんだ。

 

浜崎あゆみのグッズTシャツを着ている。

好きなんだろう。それすらステキな気がしてきた。

 

「すいません、おじいさんにここで洗ってけばいい、と言われたので」と説明して

礼を言ってその場を辞した。

キャンプとは

キャンプって、朝ご飯作って、昼ごはん作って、夕ご飯作って、

忙しいけど、ご飯作る以外は基本何もしてない。

子供たちも川の辺りでハンモックをブランコみたいにして、

飽きもせずずっと遊んでる(結局ハンモックは破れてしまった!)

 

ご飯を食べて、時がただ過ぎる。

 

時間、でもないんだな。

ただ日が昇って、日が暮れるだけ。

 

そして我々は、東京から移動してきただけ。

 

移動してきただけなのに、

人間が変わったかのようにイライラしなくなってしまう。

 

緩慢な、キャンプ場の空気に染まって

何がどうでもよくなってしまった。

 

で、ひたすらご飯を作って食べる。

 

東京に、家にいると、

朝から「今日の夕ご飯どうしよ〜」と考えてて

 

いっつもご飯のことを考えてる!

もうやだ!

 

ってなったりしますが、

キャンプに来るとご飯のことしか考えることがない。

 

スマホでTwitterみたり、ゲームやったりして

何かやった気になってたんだな、

忙しい忙しいって。

 

本当はご飯を作って食べることしかしてないのかもしれない。

 

太古の昔から

時はただ流れ続けてて

人間がそれを細切れにして

数字を当てはめただけだもんな。

 

そんなことを考えながら、

また東京に移動する。

 

移動してきただけなのに、

またイライラした人間に戻ってしまった。

 

家ではキャンプはできない。

 

・・・キャンプは、家ではできないんだよ!

 

この記事を書いた人

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リョウコ

1974年生まれ。子供が2人と旦那が1人で、栃木県在住。
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